サンフランシスコ講和条約発効72周年 日米両国首脳に対する公開声明「新しい日米関係の在り方」4/28公開
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2024 年 4 月 28 日
日本国 内閣総理大臣 岸田文雄 様
アメリカ合衆国 大統領 ジョー・バイデン様
「日本の真の独立を目指す有識者会議」 (ECAJTI)
サンフランシスコ講和条約発効 72 周年 日米両国政府に対する公開声明「新しい日米関係の在り方」
われわれ「日本の真の独立を目指す有識者会議」(議長=小堀桂一郎、ECAJTI)は、2024年3月24日に発足いたしました。
占領軍が去り、日本が主権を回復してから72周年のこの日(4月28日)に、われわれは、日米両国政府に対して公開声明を発出することにいたします。
真の独立国とは
さる4月11日、岸田文雄総理がアメリカ上下両院合同会議で演説した中でも述べたように、日米両国は、国際秩序に挑戦する中国からの大きな挑戦に直面しています。アメリカだけでは対応しきれない部分もあることから、日本も大きな役割を果たさなければなりません。
しかし、そのためには、日本が真の独立国にならなければなりません。われわれは、文字通り、わが国が真の独立を回復・達成することを目的として活動する団体です。すなわち、独立国家の「三種の神器」である「自前の憲法」、「国防軍」、「防諜法に裏付けされ統合された国家情報機関」の3つを実現することです。したがって、憲法第9条の廃棄もしくは抜本的な改正、および自衛隊の国防軍化が不可欠と考えています。
「インド太平洋憲章」を
全体主義的強権国家である中国・ロシアに対抗していくためには、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を目指す自由・民主主義陣営が、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を有効に展開していかなければなりません。
FOIP は、安倍晋三元首相が2016年8月、ケニアのナイロビで開催された日本主導の「第6回アフリカ開発会議」(TICAD 6)で最初に提唱したものです。
そのためには、インド太平洋における自由主義陣営としての共通の理念が必要です。具体的には、われわれは、「インド太平洋憲章」(IPC)が必要なのではないかと考えています。「自由で開かれたインド太平洋」戦略を力強く推進していくには、日米豪印4カ国の安全保障戦略対話であるクウォッド(QUAD)が中心とならなければなりません。
QUADは、2019年9月の第1回外相会議(於・ニューヨーク)から始まりましたが、この枠組みも、安倍政権の時に日本が主導してできたものです。
「自由で開かれたインド太平洋」には、いまや域外のヨーロッパ諸国が多数関与しています。英独仏伊蘭およびEUに加え、ヴィシェグラード・グループ諸国(ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア)も賛同し、FOIP の戦略的枠組みに参加しています。
われわれは、日本が中心となって、QUADで「インド太平洋憲章」の草案作りをして、それに韓国や ASEAN など他の域内諸国の賛同を得るような形にできれば良いのではないかと考えています。
2021年6月、英国コーンウォールで開催されたジョー・バイデン米大統領とボリス・ジョンソン英首相(当時)の米英2カ国首脳で「新大西洋憲章」なるものが出ましたが、21世紀の地政学的な中心は、大西洋ではなくインド太平洋です。
また、米英2カ国だけというのもかなり時代錯誤の感が否めません。21世紀は、やはり「インド太平洋憲章」を作らなければなりません。
不平等な日米地位協定
ところで、日米安全保障条約の第6条に基づく在日米軍の地位に関する「日米地位協定」は、著しく不平等であり、日本の国としての非独立性を象徴するものです。これを抜本的に改定し、より対等なものとしなければ、わが国は真の独立国とはいえません。
インド太平洋戦略で、日本が大きな役割を果たすためにも、日本の真の独立は不可欠です。
冷戦終了後、ドイツ、イタリア、韓国は、在留米軍の地位協定の改定を実現させました。
しかし、日本の場合は、冷戦終了後も日米経済摩擦が激化していたこともあり、日本政府は日米地位協定の改定を求める機会を失いました。
われわれ自由主義陣営は、「法の支配」を標榜しているわけですが、日米地位協定は、それと著しく反するものであり、民主主義的プロセスから完全に逸脱しています。
日米地位協定自体は、国会での審議を経たものですが、国会の審議を迂回した非公表文書や密約が横行しています。
例えば、日米地位協定は、1960年に署名・発効しましたが、それと並行して非公式文書の「日米地位協定の合意議事録」なるものが存在します。これは、日本の国会審議を全く経ていません。
さらに、日米地位協定にも、日米地位協定の合意議事録にも、「日米合同委員会で決める」とする条文がたくさんあります。日米合同委員会というのは、日米地位協定の第25条に基づいて設置されたものであり、在日米軍司令部副司令官(通常は准将)と外務省の北米局長が共同代表を務めて、原則として毎月 2 回開始される日米の実務者による協議会です。
選挙で選ばれたわけではないアメリカの軍人・外交官(駐日大使館員)と日本の官僚・自衛隊員とによって構成される単なる協議会ですから、本来は、重要なことは決定できないはずですが、実際には、「横田空域」、「岩国空域」、「嘉手納空域」などをはじめとして、様々な重要事項が日米合同委員会で決まっています。
横行する非公式文書
現行の米軍が指定する空域は、1975年5月に開催された日米合同委員会の民間航空分科委員会で決まったものですが、飛行禁止区域が非常に大きいため、日々、民間航空に飛行上の危険性と経済的な負担の両方を強いています。
日米合同委員会の決定事項は、無論、国会審議は全く経ていませんが、それ以前に、日米合同委員会の議事録は、日米両国政府が合意しない限り、公表しないことになっているのです。
1973年4月、沖縄の米軍が、県道104号線を封鎖して実弾射爆訓練を行ったことが問題になりましたが、実は、沖縄返還時の1972年5月15日、いわゆる「5・15 メモ」という非公開の日米合意があり、県道の封鎖はこの合意に基づくものであることが判明しました。
このメモは、1997年3月25日になって、ようやく全文が明らかになりました。このように、在日米軍に関しては、公にならない形で、これまで数多くの日米合意が結ばれてきてしまいました。
日米地位協定の抜本的改定を
日本政府は、何か大きな誤解しているようなのですが、在日米軍基地を巡る日本の立場は、決して弱いものではありません。在日米軍基地の最大の特徴は、米軍が世界に展開するための巨大な兵站基地であるということです。
米軍が有事に世界に展開する際、在日米軍基地が、地球上の概ね半分をカヴァーしていると言われています。残りの半分を、米国内の基地がカヴァーしていると言われます。韓国に駐留する米軍は、その地域の安全保障のためだけのものです。
ドイツに駐留する米軍もかつては同じ性格だったのですが、近年は、中東や北アフリカなどドイツ国外へ展開するための兵站基地としての役割を持つようになりましたが、在日米軍基地は、それとは次元が異なる米国にとって唯一無二の世界戦略上欠くべからざる極めて重要な在外基地なのです。
仮に在日米軍基地を失ったとしたら、アメリカは世界のリーダーでいることはできないのではないでしょうか。
他方、膨大な米軍基地は、日々、日本と日本国民に大きな負担をかけていることは事実です。
われわれは、日米地位協定を抜本的に改定することを提案します。
廃止すべき日米合同委員会
全国知事会は、2018年7月28日と2020年11月5日の2度にわたって、「米軍基地負担に関する提言」をまとめ、その中で、日米地位協定の抜本的な改定を求めています。
沖縄など米軍基地が偏在している特定の地域だけでなく、全国の知事会が日米地位協定の抜本的な改定を求めている事実を、日米両国は重く受け止めなければなりません。
抜本的な改定に際しては、従来の様な国会審議を通さない形の非公式な合意を付随させることは一切認められません。いまの日米合同委員会は廃止すべきです。
事務方の協議機関が必要なら、日米地位協定を抜本的に改定する際、完全に透明性を持った別の協議会を設置することが肝要です。
このように、米軍基地をめぐる法制の整備(民主化・透明化)を終えて初めて、日米が、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」をインド太平洋で推進する本当の資格が備わるといえるのではないでしょうか。
今のままでは、日米両国ともに、「インド太平洋憲章」を起草する資格などはないと言われかねません。このままでは、日米両国ともに、法治国家の名折れということになりかねません。
米国は「ストロング・ジャパン」政策の徹底を
次に、巨視的な観点から、日米両国政府に対するわれわれの要望をまとめたいと思います。
まず、アメリカに対しては、対日政策については、今後、「ストロング・ジャパン」の方針に徹するべきだということです。それが、アメリカの国益にとっても適うと、われわれは信じます。日本の真の独立は、アメリカの国益にとってプラスだということです。
さもなければ、日本が、インド太平洋戦略で大きな役割を果たすことはできません。日本政府に対しては、「自由で開かれたインド太平洋」戦略の中で、QUAD について主導的な役割を果たすべきだということです。
また、この地域のアメリカの諸政策について、日米で事前に協議し、日本側から政策提言を積極的にインプットしていくことも極めて重要です。この地域での政策の過誤は、わが国に対して致命的なダメージを与えかねません。
最後に、日米両国政府の交渉姿勢に対する要望があります。
日米は、法の支配、民主主義、市場経済など主要な価値観を共有しますが、他方では、国の歴史的な成り立ちは全く異なります。その意味では、世界で最も異なる 2 国間同士といえるかもしれません。
日米両国は、交渉に際しては、そうした国柄の違いを認め、お互いに相手の立場を思いやる姿勢が大切なのではないでしょうか。
「日本の真の独立を目指す有識者会議」
創立メンバー
議長 小堀桂一郎、東京大学名誉教授・文学博士
副議長 田中英道、東北大学名誉教授・文学博士
副議長 山下英次、大阪市立大学名誉教授・経済学博士
有識者議員 田母神俊雄、田母神事務所代表、元航空幕僚長
有識者議員 松田 学、松田政策研究所代表、元衆議院議員
有識者議員 矢野義昭、日本安全保障フォーラム(JAFOS)会長、博士(安全保障)、元陸上自衛隊陸将補
有識者議員(五十音順)
稲村公望 元・日本郵便 副会長
井上正康 大阪市立大学名誉教授・医学博士
入江隆則 明治大学名誉教授
折本龍則 千葉県議会議員
田沼隆志 千葉県議会議員、元・衆議院議員
坪内隆彦 ジャーナリスト
樋口隆一 明治学院大学名誉教授・哲学博士
茂木弘道 「史実を世界に発信する会」代表
山口敬之 ジャーナリスト、元・TBSワシントン支局長
山田 宏 参議院議員
山中 泉 (一社)IFA代表理事
渡辺利夫 東京工業大学名誉教授・経済学博士、元・拓殖大学総長